情報処理技術者試験が仕事の役にたたないと言う人がいるが、それはもっともなことだと思う。コンピュータの仕事で難しいのは、問題を解くことではなくて、問題を作ることにあるからだ。
コンピュータシステムが完成するまでには、どういうシステムを作ればいいかという「システム要件」を決めるところにいちばん長い時間とパワーがかかる。その要件さえ決まれば、あとはぱぱっと作るだけだ。作る期間というのは、実はおどろくほど短い。長い期間をかけて作っているように見えることがあるのは、ごく単純化していうと、システム要件にあいまいなところが残されていたりするせいではかどっていないだけである。
このシステム要件というのは、情報処理技術者試験でいうところの「設問」にあたる。そして作ることは、設問の回答を導くことにあたるわけだ。設問がちゃんとしていないとそれを解く人がちゃんとした回答を導けないのと同じで、システム要件がちゃんとしてなければそれを元に作る人が困る(正解を導けない)。逆に解くべき設問さえちゃんとしていれば、答えは自ずと明らかであるのだ。あの試験はその「自ずと明らか」であることを導ける能力があるかどうかを確かめるためのものであると思う。だけど、その能力は必須ではあるけど実はあまり重要ではないのだ(解ける人はたくさんいるのだから)。それが情報処理技術者試験が仕事の役に立たないといわれていることのひとつの理由だと思う。コンピュータの仕事で今いちばん必要とされているのは、問題を解く能力ではなくて、解ける問題を作る能力なのだ。その解ける問題を作るためには、説明したり説得したりと、実に気乗りのしない人間くさいことをいっぱいしなければならない。それがシステムエンジニアというもんである。私の少ない経験で言うと、そうなのだ。
・・って、5年も受験してないくせにえらそうなこというなといわれてしまいそうだけど。