Reasonボコーディングのイロハ(Reason Vocoding 101)
http://www.propellerheads.se/substance/discovering-reason/index.cfm?fuseaction=get_article&article=part5
しゃべっている人に注目(Look who's talking now).
見よ、Reason2.5のお出ましだ。悪いニュース:依然として宿題や家事を肩代わりしてくれるわけではない。よいニュース:少なくともしゃべることはできる。BV-512 Digital Vocoderというボコーダーは、エッジを削りだし、宇宙時代の描写をしてくれるハードウェアボコーダーだ。512バンドの叫びとイコライザーモードを搭載している。
 
ボ(コー)ダー略歴(A brief history of the Vo(co)der)
年は1928年。ニュージャージーにてベル通信研究所のホーマーW.ダドリーは、電話通信に必要とされていたバンド幅を減少させて伝送能力を強化するという彼の個人的な探索に着手した。
彼は自分が時代の先を行っていることにほとんど気づいていなかった。最近では似たような研究が、携帯電話のオペレータがシステムにこれ以上多くの通話が入ってこないように抑制するのにも行われているし、way of digital technology like Dynamic Half-Rate Allocation and Adaptive Multi-Rate Codecsにも利用されている。ホーマーのアイデアは音声を解析するためのものであり、それをゆがめて狭いバンド幅のやせた信号に再合成するものだった。彼はこの研究を”同帯域を通過する音声の解析と再合成(parallel bandpass speech analysis and resynthesis)”と呼び、ボコーダー(”ボイスコーダー”の略称)と名づけたプロタイプによってそれを概念化した*1ボコーダーは商品として流通しうるデザインへと進化し、呼び名も”The Voder”に変わり、1939年の世界大戦時に大勢の観衆の前でそのベールを脱いだ。ここに1939年のオリジナルデモを聞くことができる:(mp3)
悲しいことに、ボーダーは大成功することはなかった。商業的には---人間の電話の声を不気味なロボットみたいに変換するというアイデアは電話会社の経営者にとっても受け入れられなかった。だけど、デジタル版のボーダーは世界大戦中に颯爽と登場し、看板役者として活躍した。暗号化による安全な音声伝達システムとして、フランクリンD.ルーズベルトとウィンストンチャーチルの役に立った。この機械は軍事機密として70年代まで隠されたままだったのだ・・・!
そう、デジタルボコーダーは1942年に存在していた。そして、60年後の現在は、ついにそれを使って遊ぶようにまでなった。でもボコーダーはどんなふうに働くものだろう?
 
2人を連れて踊りに(It Takes Two to Tango)
なによりもまずボコーダーの概念について知っておかなきゃいけない。それはこうだ:それが機能するためには2つの音が必要ということ。ひとつはキャリア、ひとつはモジュレータだ。これは2つの独立したReasonデバイスが必要ということを意味するものではないけど、それについてはまたいずれ。
よい例え(欠点もあるが)として、キャリアを生の素材と考え、モジュレータを鋳型と考えるといいだろう。つまりボコーダーモジュレータとしての役割を演じ、そこにどろどろのキャリアを注ぎ込む。その動作を紹介しよう:
シュレッダーに吸い込まれる紙のように、モジュレータ信号はX個のバンドに分割され、それぞれは時間とともに変化する周波数帯の「スロット」をあらわしている。BV-512ではX個は4,8,16,32,512にできる。そしてアナライザはそれぞれのバンド幅へ音量を割り振っている。このプロセスによって、帯域の「設計図」が抽出される。と同時に、キャリア信号は解析され、スライスと同数に分割される。モジュレータの周波数特性は、キャリアの中に”無理やり押し込められる”わけだ。
したがって次の説明の方が正しい。キャリアはリッチで特別な内容なのでボコーダーモジュレータのために”マッチするところを見つける”のだ。たとえば、キャリアの音が重々しくフィルタされた高音域が無いパッドサウンドで、モジュレータはボーカルを録音したものだとすると、結果は芳しくないものになる。というのは、キャリアの素材には”s”や”t”のような子音に要求される高音域がまったく伴っていないからだ。*2
 
Classic Vocoder
さてボコーダがどんな動作かがわかったところで、古きよき時代のボコーダサウンドを味わえるという幸福を実現してみよう。そのためにはボーカルサンプル(モジュレータ)とアナログシンセサウンド(キャリア)が必要になる。ボコーダには古いアナログボコーダを模倣するために8〜16のバンドモードが必要だ。かつてのバンド数がそうだったからだ。32とか512バンドにすると「ロボット」っぽさや人間っぽさが損なわれてしまう。
一方キャリアは、すばやい結果を得られるように生のものを使う。フィルタを通していないノコギリ波だ。それも生っぽさを強調したもの;ボーカルを得るためにはふつう、シャープで、ラウドがかかっていて、動じなくて(unrelenting)、サウンドが自分自身にビビってしまうようなのがもっとも効果的だ。
そういうキャリアサウンドを作るためのお手軽な方法はこうだ:
 ・Sbtractorを作る。
 ・スタートポイントとして”init Patch”を使い、Filter1をFreqスライダーを127まで動かして完全に開放する
 ・このパッチをもっと”緩慢に(sluggish)”するために、ポルタメント、少々のアタックタイム、リリースタイムを追加する。これは生き物っぽさ(organic touch)をキャリアサウンドに追加する。人間の声はA)ちょっとだけノートに揺らぎがあるし、B)gate mode*3のようにすぐに開いたり閉じたりはしないからだ。
この基本設定からバリエーションを追加することができる。モノラルのキャリアが必要かもしれない。オシレータ2や、それのデチューンが必要かもしれないし、あるいはそれをサブオシレータとして使うことが必要かもしれない。もっとキンキンなのとか、ささやきのようなのとか、子音を強調させることも必要かもしれない。Scream4の追加が必要かもしれない。Scream4はキャリアとボコーダのどちらの後ろに追加しても、とてもよいスパイスになる。
ここにサンプルの設定がある:classic voco.rns
 
人間みたい(Almost Human)
機械っぽいのじゃなくてもっと人間味のあるのをお探しなら、ディテールがよく通る32〜512バンドに増やすのがいい。キャリアサウンドには2つの材料が必要だ。つまりボーカルの音色(サンプルといった方が適切)とノイズだ。NN19かNN-XTを使うのがたぶんいちばんいいんだろうけど、ここはひとつMalstromでやってみようじゃないか:
 ・Marstromを作る
 ・片方のオシレータをノイズとして使う:”Pink Noise”を試してみよう。それをフィルタを通してルーティングする。Bandpassモードにして、Frequencyノブを”SSSSSS”みたいな音が続くようになるまで回そう
 ・もう一方のオシレータをボーカルの音色として使う。”MaleChoir”とかのいろんな声のグレインテーブルを試してみて
 ・上に書いたSubtractorのように、ちょっとだけポルタメント、アタック、リリースタイムを追加しよう
Malstromのセットアップ:humanoid voco.rns
違うMalstromのグレインテーブルで遊んでいると、違った言葉を発しているかのようなキャリアサウンドがいっぱい見つかるだろう。それか、もし自分自身がボーカリストなら、自分の声をサンプリングし、”"aaaaaaaah"とか"ssssssss"を互いにミックスしてサンプルをループしてみよう。これをキャリアとして512バンドで使ったら、とても人気のある(人によっては大嫌いな)「オートチューン*4」のエフェクトに近づくことができる。マドンナの”Die Another Day”やシェールの”Believe”とかその他いろいろ。調べてみよう!
 
ノイズ公害(Noise Pollution)
ノイズは亡霊を豊富に含んでいるおかげで魅力的なキャリア素材だ。ホワイトノイズは全周波数域を含んでいるが、これはモジュレータシグナルに伴う周波数が必ずあるということだ。それによってモジュレータの”投影(project a shadow)”ができる。これは理論上は、ボコーダのディケイタイムを伸ばすことになり、結果的にリバーブのような効果を与えるということを意味している。他のリバーブの必要に迫られるというわけではないけれど(すでにRV-7000がある)、ボコーダのリバーブはちょっとひねくれているのだ。デモンストレーションしてみよう:
 ・例のファイルreverb voco.rnsをダウンロードし、Reason2.5で開き、Playを押す
 ・この設定を試す:キャリアはMalstromの”Pink Noise”グレインテーブルで、モジュレータはDr.REXのドラムループ、そしてボコーダは512バンドモードにする。アタックタイムをあげて、ちょっとだけ前ディレイ(pre-delay)のリバーブエフェクトがかかるようにする。
 ・BV-512のDecayノブをゼロまで、Dry/Wetノブを127まで回す。するとキャリアサウンドにドラムループの「ゴースト」が聞こえるようになるだろう(mp3やRealAudioのヘビーなコンプレッションに似ている)
 ・Decayノブを元の87くらいの位置にもどし、Dry/Wetノブも同じく50/50(だいたい64)にもどし、もう一度ソングをかけてみよう。そしてここからが面白い:
 ・ボコーダのShiftノブをこねくり回そう。自動化できることやCVコントロールの事もわすれずに。
 ・MalstromのMod Bをオンにする。これでグレインテーブルのノイズをコントロールする。
 ・Malstromのグレインテーブルをブラウズし、”Thunder reverb”や”TibetanMonks reverb”みたいなのを聞いてみて。探検だ!
 ・おまけステージ:シーケンサ上でボコーダのトラックをMIDIインプットに切り替え、Dr.REXのトラックをミュートにする。これでボコーダのバンドをキーボードから演奏できる
 
同じようでちと違う(Same, Same But Different)
同じデバイスをキャリアとモジュレータの両方に使う方法なんてあるの?もちろん。その目的は?明確にある。
 
1)キャリアとモジュレータに同じ音を使う
言うまでもなく、キャリアとモジュレータの信号が同じものだったら、何も起こらない。音の特性をを頑なにそのままにすると、結果は現状と同じになる。でもひとたびエフェクトを鍋の中に放り込んだらおもしろいことになる。たとえば(Par example*5):
 ・NN19、BV-512、Spider Audio、Scream4を作る。NN19にボーカルサンプルを読み込む
 ・Spiderを使って、NN19のアウトプットを分割し、片方の信号をBV-512のモジュレータインプットへ、もう片方をScream4を通してBV-512のキャリアインプットにルーティングする。
 ・NN19をキーボードから演奏し、BV-512のShiftノブをめちゃくちゃにまわす。Shiftパラメータはフォルマント(倍音の構成要素)をコントロールするものだ。
 ・(お手本のファイル:shitf voco.rns)
 
2)キャリアとモジュレータに同じデバイスを使う
NN-XTは複数のアウトプットを備えているので、キャリアとモジュレータのどちらも同時に使える。言い換えれば、必要なのはMIDIインプットだけということだ。たとえば(Par ejemplo*6
 ・BV-512を作る。NN-XTを作り、ストリングスのパッチを読み込む
 ・Add one sample Zone and span it across the entire keyboard. Make a separate Group of it and route it to Output pair 3+4. Load a rhytmic sample into this Zone.*7
 ・グループポリフォニーを1に設定する(モノラル)
 ・キーボードトラッキングをゼロにする(固定ピッチ)for this Zone.
 ・1と2のアウトプットをBV-512のキャリアインプットに接続する。3はモジュレータインプットへ接続。
 ・これでキーボードからコードを演奏でき、リズムサンプルがこのサウンドの音色に影響しているのがわかる
もちろん2つのポリフォニックNN-XTを使うことができる。上の設定の”morph”が同時に聞こえる:つまりあなたが呼び出したストリングス、ピアノ、エフェクトサウンド、パッド・・・などだ。
 
最後に
このエクササイズで、ボコーダが単にごにょごにょしゃべるシンセというだけのものじゃないことがわかっただろう。ボコーダはバンドパスフィルタでもあるし、ひとつの音声信号と他方の音声信号を合体させるものなのだ。音源はどんなふうにも変えることができるし、ボーカルはすなわち10億以上もの資源なのだ。というわけで仕事にとりかかろう!

*1:イデアを形にするのだから具体化ではないかと思う

*2:単純にキャリアは音を提供し、モジュレータはリズムを提供すると考えたほうが正確ではないがわかりやすい。たとえばピアノをキャリアにして、ドラムをモジュレータにすると、ドラムのリズムでピアノの音が鳴る。本文の説明がわかりにくいのは、逆の理解もできてしまうからだ。無理やり押し込められるのはキャリアであると考えることもできる

*3:何のことだろう

*4:ボーカルの音程を強制的に合わせる

*5:何かと思ったらフランス語だった。英語のFor exampleの意味のようだ

*6:今度はスペイン語

*7:私はNN-XTを使わないのでゾーンとかスパンとかよくわかんないです