heppoco2006-02-12

チキンラーメン
 
教員免許を持っている人と話しをした。その人は小学校の教師になりたいらしい。
なんで教師なんかになりたいのか、と野暮な質問をなげかけて見ると、こういう答えが。
最近の子供は顔色が悪い。これは家庭環境が悪化してることが原因だと思う。いい育ちをした子供は大人になってもとても顔色がよくて、うじうじしていなくて健康的だ。俺は今の子供たちを元気にさせたい、と。
うむ、そうですか。まあこの人には動かしがたい信念が貫かれているんだなあと、飽き性の私は感服してしまったのです。しかし信念を貫くのは必ずしもいいことばかりじゃない。私はこの人の話の根本的なところで疑問に思うことがある。
今の子供たちはそんなに、顔色が悪いだろうか。まあ、悪いかもしれない。でも、それは今の子供たちに限ったことじゃあない気がするのだ。どんな時代にだって顔色が悪い人はいたと思うし、うじうじした人もいたと思うのだ。昔の子供のことなんて実際のところはどうなのかわからないが、わからないのはこの人だって同じことだろう。だから、今の子供がどうだといって決め付けるのはあんまり正しい信念とは思えない。
思えないと言っておきながら何だけど、今の世の中はあらゆることにおいて昔よりもよくなっていると私は思う。「暗い時代になったねえ」と言う人ってたくさんいるけれど、ほんとにそうかな。瀬戸内静寂みたいなことを言うようだが、今の時代が暗いのだとすれば、そう言っている人の価値観が暗くて、偏狭なだけじゃないかと思う。お金がなくちゃ何にもできなくて生き方の幅が狭まった、なんていう人がいる。そんな世の中が子供の心を荒廃させるのだ、と。
まあお金には確かにそういう面はあるが、じゃあお金がなくても生きていける世界ってどうなの。お金がないっていうことは、人と人との間で価値や労働力の交換ができないってことだから、自分のことは全部自分で面倒を見なきゃいけないことになる。自分で家を作って、水道を引いて、食べ物を調達して、暇つぶしに何か遊びを考えなきゃいけない。いや、そもそも暇なんてできないかもよ。いろいろと制約が多いぞ。かえって生き方の幅が狭まるんじゃないのかな。子供たちは重労働でつかれきって、ろくな遊びがなくて、退屈しきってしまうんじゃないかな。
でもお金がある世界なら、自分でしなきゃいけないことがかなり減る。家は快適な上に頑丈で、雨風や野良犬を防ぐことができるし、誰かが作ったおいしい米やかぼちゃは栄養たっぷりだし、パソコンやボーリングで楽しく遊ぶことができる。すばらしいじゃないですか。
その分、自分でお金を稼ぐ必要がでてくるのだけれど、どうやってお金を稼ぐかはその人の自由だ。そして今の時代は、ありとあらゆるお金の稼ぎ方が存在する。自分のやりたい職業がまだなければ、自分で職業を作ることだってできる。どうぞお好きなものを!ってわけだ。・・・これって、幅広い生きかたをできるすばらしい世の中じゃないか。夢たっぷりだよ。もちろんそれなりの生活をするためには、金を稼ぐためにある程度の努力が必要になってくるけれど、それはお金がない世界で必要とされる努力よりはずいぶんと楽チンなはずだ。このすばらしい世界でこそ子供の心は豊かになるんじゃないのかな。あ、昔よりも今のほうがよくなっていることを書くはずだったのに話が違うな。
 
カレーピラフ
ポテトサラダ
 
しかし昔のほうがよかった、と思えることって何があるのかな。私は何ひとつおもいつかないが。子供の遊びにしても、ベーゴマ凧揚げやスカートめくりしか能のなかった時代からポケモン遊戯王やプレステまで、遊びの種類が増えてしかも全部高度になっていて、何がわるいのかなと思うが。まあいい。
件の教師になりたい人の話だけれど、現代の子供を元気にさせたいという暑苦しい使命感に燃えるのは、それも幅広い生き方のひとつだとは思うけれど、やっぱりなんかやだなあと思ってしまう。そこで、子供を元気にさせるためにどんな指導をするつもりか聞いてみた。その答え。
子供たちはやっぱり自分のことを大人に理解してほしいんだと思う。そうすれば世代の差を越えてどこか通じ合えて、元気になってくれるんじゃないかな。実際に理解はできなくても、「この先生は自分のことを理解しようとしてくれている」っていうことが伝わるだけで、子供は変わると思うんだよね。
ははー、そうですか。そんなあなたにとってはまさに先生は天職だな。
私が子供のころは小学校の先生ごときに何の期待もしていなかったなあ。ほかの子供たちはどう思っていたか知らないけど、先生の何が嫌いかって、いちいちかまってくることがうっとうしく思っていた。たとえば暑苦しい使命感に燃えている先生。
さてこの先生の卵は、そんな生徒の心情をも「理解」してくれるのかな。してくれたら、どう扱ってもらえるんだろうか。余計な干渉はせずに放し飼いにしといてくれれば、うれしいと思う・・・。大人が制約のない社会を好むのなら、先生のおせっかいという制約から開放された学校生活を送らせてあげるのは、子供にも悪いことじゃないはず。そうしたほうが、彼らは「元気に」なってくれるんじゃないかな。今も十分元気だと思うがね。
 
ごはん
ポテトサラダ
かぼちゃの煮物