heppoco2006-01-03

ごはん
味噌汁
 
五目チャーハン
 

悪役レスラーというのはリング下ではいいやつ、というふうに相場が決まっている。ところがこの本の主題であるグレート東郷という悪役レスラーは、リング上でもリング下でも救いようのないくらいどうしようもないやつだ。試合前に握手すると見せかけて隠し持った塩で目潰しを食らわせたり、試合中に負けそうになったら土下座して相手が油断したところへ金的をキメる。リング下では嘘をつき、人をだまし、常軌を逸した吝嗇家。
彼はもう死んでしまったけど、生の彼を知る人は誰一人として彼を良く言う人はいない。ふつうは悪いやつと思われていても、そこが愛嬌だと笑う人もいるものなのに、グレート東郷は本当にみんなから嫌われていたようだ。日系人と噂される彼はアメリカのリングを主戦場としていたが、アメリカ人には「リターンオブパールハーバー」と揶揄され、散々反則技を繰り返した挙句に負ける。そしてアメリカのそんな評判を聞いた日本人もいい気分がしないから、結局どっちの国民にも嫌われるのだった。この嫌われ方は朝青龍の比ではない。朝青龍はこないだちょっと意外な素顔を見せて人間味を飛躍的にアップさせるなどしてファンを増やした。片やグレート東郷には意外な素顔などない(少なくとも知る人はいない)。あいつは本当に本当にどうしようもない悪役なのだ。と、誰もが思っていた。
そこへ著者の森達也が、そんな嫌われ者の王様グレート東郷の知られざる素顔に迫る!それがこの本。著者の試みは大きく2点に分けられる。まずグレート東郷は本当に悪いやつなのか、演じているだけなのかを暴くこと。次にグレート東郷は中国人か韓国人か北朝鮮、の日系人という噂があるが、それは本当かを暴くこと。あと複線として、プロレスを語るときには触れずにおけない八百長についても。
著者自身は生のグレート東郷を知らないから、インタビューをしたりプロレス雑誌や週刊誌などの文献(!)に頼るしか方法がなくてまあいろいろと奔走している。著者の試みが成功したかどうかよりも、結局はその奔走を楽しむための本という感じがする。そこんとこ好き嫌いはあるだろうけど、私は面白いと思う。著者はテレビ屋だけど、テレビみたいにくどくないからよいです。
さて、グレート東郷は本当は悪いやつではなかったのか?日系人だったのか?プロレスは八百長なのか?
どーなんでしょう。
プロレスが八百長というのは・・・これってみんなよく気にするけど、そんなに気になりますか。K-1とかボクシングは真剣勝負だから良くて、プロレスはわざとらしいからダメっていう人もいるし、馬場チョップのスピードよりも相手が倒れる速度のほうが速いと言い立てる人もいる。それは確かにそうだ。でもそういう人は、誰かが「プロレスは八百長だ」と言ってくれるのを待ってませんか。まあ気になる人はずっと気にしていればいいと思う。
私はプロレスは嫌いじゃない。彼らのやっていることはかっこいいと思う。そしてグレート東郷もかっこいいと思う。あんまりよく知らないのだけど。