ショートケーキ
 

黒人アスリートはなぜ強いのか?―その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る

黒人アスリートはなぜ強いのか?―その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る

10年くらい前、確か世界陸上イエテボリ大会だったと思う。3000m障害という種目でケニアがやたらに強いというので、その強さの秘密を探るVTRが挿入された。その映像はケニアの牧場のような草原で、ケニア人たちがそこにある柵をひょいひょいと飛び越えている様子がうつされていたのだった。まあケニアと言いながらあんな草原をうつすのはそれだけで偏見に満ちた視点だともいえるのだけど(少なくともケニアの首都ナイロビは現代的です)、それはまあおいておくとして、そのナレーションに思わず吹き出しそうになった。いわく「ケニア人はこうして日常的に柵を飛び越える運動をしているから、3000m障害の水濠をうまく飛び越えられる」。
あるいはアトランタオリンピック(?)あたりでどうして日本人は水泳が強いのかといって、またもやその秘密を探るVTRが映し出された。それは日本のお茶の間の風景で、正座の状態から立ち上がる場面が白黒の画面にリピートされた。いわく「こうして立ち上がる動作をする文化が水泳に必要な”蹴る動作”の基礎となった」。呆然。あれ本気で言ってたのだろうか。本気でないとしてもちょっと救いようのない視点だ。
陸上競技で言えば短距離(100m、200m、400m)は黒人が強くて、中長距離(800m〜10000m)はヨーロッパもなかなかいけるけどやっぱり黒人が強い、マラソンになると日本人も勝負できるようになってくるけど、無練習で優勝しちゃう黒人なんかを見るとやっぱり実力の差は明らか(フルマラソンを無練習ってすごすぎるんですが)。アメリカンフットボールのコーナーバックというポジションはほぼ黒人のためにあるようなもの。バスケットボールも黒人の独壇場といえる。一方、水泳なんかは黒人選手がまったく見当たらない。
こういったことはもうほとんど暗黙知となっている感がある。特定のスポーツで黒人が強いのは「当たり前のこと」なのだ。でも公の場では、特に欧米では、誰もその常識を口にしたがらない。そればかりか、根拠レスのあほらしいVTRでごまかそうとする。なぜか。それはタブーだからだ。
この本は、そのタブーにあえて切り込んでいこうとする意欲的な本。
黒人は強いという当たり前のことがどうしてタブーになったのか。それは身体能力の優越性がすなわち知能(IQに限らず)の低さを連想させてしまうからだ、という。そんな連想をするのは妙なことなのだ、リフティングの練習をしたら頭が悪くなるか?そんなわけはないでしょう。うん、そんなわけはない。
でも。
それはあくまでも、個人の話だ。人種的にはどうだろう。まず、人種で身体能力の差があるのは、常識的にも、科学的にも、明らかだ。これは科学的にそうなのだから、道徳的な理由でそういった言説を抑圧するのは有害である。その意見には私も賛成。じゃあ、身体能力に差があるのなら、知能にも生得的な差があるというのは、いかにも明らかなことだという気がしてくる。もし遺伝子の解析が進んで、そのことが明らかになったらどうなるだろう。黄色人種は、身体能力も知能も低いという結果がでたらどうしよう。それは科学的に正しいことだとして、その実験結果を、道徳をたてにすることなく受け入れることはできるか。
・・・正直なところ、私はそれを受け入れるだけの心構えはできていない。反論できるとすれば、身体能力や知能を測る指標がかたよったものだ、と指摘することくらいか(実際、いろんな指標は突っ込む気があればいくらでも突っ込めるのは救いだ)。いずれにしろ、遺伝子の解析が完璧にできるときがやってくるから、そのときを覚悟しておかないと・・・。私には真偽のほどを判断できないが、この本には「身体能力と知能は反比例の関係にある」と主張する学者が登場する。
 
この本は、人間の多様性を認め合おうよ、という趣旨が一貫していた。黒人は特定のスポーツに秀でているのはもう間違いのないことだが、その代わりに彼らは水泳が苦手。日本人は瞬発力がない代わりに水泳が得意。現実がそうなのだから、それを否定するのはおかしなことだ。と、そういうことを言っている。その意見には私も賛成するのだ。
でも、この本の主張に安易に賛同するのはちょっと怖い面もある。
多様性って、考えて見ると「誰にでもいいところがある」といっているわけではないのだ。なんのとりえもない人や人種(性差も・・・)があったとしても彼らを認めなくちゃいけない。そのとき、彼らが多様性の一部であるというただそれだけのことで、救える、と素直に思えるだろうか。あるいは、なんのとりえもないのが他でもない自分だとしたら、その現実にイエスと言うことができるだろうか・・・。
 
んーいろいろ考えさせられた本でした。この本は論点がとても多い上にどれも複雑で、ちょっとやそっとでは整理できなかった。ぼんやりと思ったのは、あらゆる差別をなくすのは無理ではないかな、と。なくそうと努力するほど、差別が再生産されてしまう。戦争と同じような構造になっている気がした。暗澹たる気持ちになれました。
あ、ちなみにアマゾンでも指摘されているけど、この本は50%ほど看板に偽りありです。黒人アスリートが強い理由を科学的に解明するのではなくて、「黒人アスリートが強い」ということを誰も言いたがらない理由を考える本です。
なんかこの本はあまり出回っていないらしくて、アマゾンでも残り3点ですぞ。絶版になるのは惜しいので、買いました。
 
ミートスパゲティ
 
算数の話です。
職場まで12kmくらいある距離を40分くらいかけて自転車通勤しているのだけど、平均時速はどれくらいかな、と考えた。40分というのは40÷60だから0.67時間だ。距離は12kmだから12÷0.67で平均時速はおよそ17.9km/hになる。電卓さえあれば簡単に計算できる。
こういう計算は自転車に乗っていると比較的よくおこなうので、表を作っていつでもみれるようにすると便利だと思って、作った。エクセルで時間を縦の行にとって、距離を横の列にとれば、平均時速を参照できるようにする。ロードバイクで街中を走る場合、平均時速はおよそ20±5km/hなので、これがあれば、自転車でどれくらいの時間があればどこまでいけるか目安になるのだ。
そこで、上記のような計算をセルに入力してオートフィルすればできると思ってやったんだけど、セルに式を入力しても答えがおかしくなった。というのも、12kmを40分で行く場合の式をこう入力したのだ。「12/40/60」。私は答えが17.9になるはずだと思っていたのだけど、バカですか。いやー、まあバカなんけど、こうなるはずだと思い込んでしまうとなかなか間違いに気がつかないものなんですよ。恥ずかしながら10分くらい迷った。エクセルのバグだとさえ思った。正しい式が「12/(40/60)」だと気づいたときは悶絶。
こういう間違いを人前でやると本当に恥ずかしいので気をつけてください。「1+2+3」の場合、「1+2」から先にやっても「2+3」からやっても答えは同じになるけど(引き算、掛け算もそう)、割り算の場合は計算の順序が答えに影響してくるのだ。ここテストに出ます!(小学校の)
 
まあ私レベルの間違いというのはあんまりないかもしれないけど、就職試験のSPIができないという人が多いので、時間、距離、速度の計算は意外とみんなできないのかもしれん。小学生で習うことではあるが、ここへさらに単位の変換が絡んでくるとちょっと混乱するのは確かだ。
たとえば100mを10秒で走る人の平均時速を計算しろ、と言われたら得意な人でもちょっと戸惑いませんか。1時間(3,600秒)の中に10秒が何回あるかを計算すると、3,600秒(1時間)÷10秒=360回。つまり1時間のうちに100mを360回走れる速度を計算すればいいわけだから、360回×100m=36,000m=36km/hになる。
じゃあ40km/hで走る人は場合は100mを何秒で走れるか。40,000m(40km)を3,600秒(1時間)で走れるということは、1秒間に走れる距離は、40,000m÷3,600秒≒11.1mだ。100mの中に11.1mが何個あるかを計算すればいいわけだから、100m÷11.1m≒9秒です。
髪の毛が1ヶ月に1cm伸びるとしたら、髪の毛の伸びる時速は何km/hか。1ヶ月は30日×24時間=720時間。1cmは1km÷1000m÷100cm=0.00001km。720時間で0.00001km伸びるわけだから、髪の毛の伸びる時速は0.00001km÷720時間≒0.0000000139km/hとなる。あってるかな。
SPIでもこういう問題ならおもしろく取り組めるのにな。自転車で何回漕げば渋谷から新宿までいけるか答えよ。ただし自転車はピスト(タイヤとペダルが一緒に回る)であるものとする、とか。おもしろそうなので考えてみる。ピストのギアの歯数はしらないけど、仮に前ギヤが40丁で後ろが10丁だとしよう。直径が27インチのタイヤだと、1インチ≒2.5cmだから、タイヤの円周は2.5cm×27インチ×π≒68πcmだ。1回ペダルを漕げば(前のギヤを40丁まわせば)タイヤが5回転する(後ろの10丁が4回転する)わけだから、1漕ぎで得られる距離は68πcm(タイヤの円周)×4(回転)=272πcm。π≒3だから272cm×3(π)=816cm。渋谷〜新宿までは10km(そんなにないかも?)だとすると、1,000,000(10km)cm÷816cm≒1225漕ぎとなる。ここで自転車はペダルが1回転する間に片足ずつ踏み込むことを考えると、踏み込む回数は1225回転×2漕ぎ=2450漕ぎとなる。けっこう多いな。まあピストだからね。
小学生の学習範囲でもそれなりにおもしろい問題は思いつく。学校の先生は「子供が考えない」と嘆くよりも、先生自身がもっと考えてほしいものだ。
あとおもしろそうな計算は、74分フルで録音してあるCDの場合、再生終了までに何回転するか。これはCDの仕組みを調べないとわからない応用問題だ。再生しているうちにヘッドが移動していくのはどう対処すればいいだろう。
 
ショートケーキ