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カルボナーラスパゲティ
 
読書感想文を書いておくのは楽しい。書きなぐりばかりで間違った読みをしていることもよくあるけど、あとでこれが意外と役に立つのですよ。

「交通渋滞」徹底解剖

「交通渋滞」徹底解剖

ざっと読んだだけだがあまり良い本ではないと思う。位置づけが明確じゃない感じ。一般向けなのか学術向けなのかようわからん。装丁だけ見ると一般向けなのかなと思わせるが、どうでもいい数式や専門用語など学術的にしか意味がないと思われるところもも多数あるのだ。
第1部ではなぜ渋滞が起こるのかを解説してあるのだけど、ここは読まなくてもいいと思う。バケツに水を汲んで洗面台にザバっと流したら、排水溝の容量をオーバーして水が洗面台に溜まる。これが交通渋滞である。というんだけどそれくらい誰でもわかってまんがな。他にも似たようなたとえがいくつもあって飽きてくる。数式やグラフもでてくるけれど、結局その原理の説明をしているだけだから、一般的な読者は理解する必要ないでしょう。専門家には有用なのかもしれないが。上り坂やトンネルの手前がボトルネックになっていますよ、ということも書かれているが、それもみんな知っているよねえ。
第2部は渋滞解消の具体的な施策。4章では信号機の最適サイクル時間(赤→青→赤の時間)を算出する方法が考えられている。いろいろ計算しているけれど、つまりは道路Aと道路Bの交差点で、道路Aのほうが交通量が多ければ道路A側の青信号の時間を長くしましょうってだけの話。右折信号が考慮されていないのが気になった。それに左折するときの横断歩行者数はけっこうなボトルネックだと思うのだけど触れられていない。
5章はコンピュータで渋滞予測とかできるかも、という内容だけれど、結論は「うーん、今後に期待!」って感じで腰砕け(道路公団ではハイウェイナビゲータといって高速道路の渋滞予測をしているけれど、あまり当てにならないうえ一般道はない)。まあでも、「人は必ずしも渋滞予測に従うとは限らない」とか、「もしすべての人が渋滞予測を信用したらハンチング(空いているところにみんな集まるから却って混む)が・・」とかいう推論はちょっと楽しい。ちなみにこれまでの章はボトルネックが渋滞の原因だと前提しているけれど、この章は交通量に着目しているところがポイントだぞう。
6章はETCの解説。ETCをつけたらインセンティブ(割引き)があるというのは知らなかったなあ。「料金所以外にも坂とかトンネルとかのボトルネックがあるのだから、ETCを導入するだけでは渋滞を解消できない」、とほのめかすところは至極ごもっともだと思いましたです。そりゃあインセンティブに対する批判も出てくるわけだ。
第3部は交通渋滞の政策。7章は路上駐車。路上駐車が交通渋滞を引き起こす原因となっているが、すべての路上駐車を取り締まると街の機能が失われるし、マンパワー的にも不可能である。と述べた上で、「ほんとはだめだけどこのあたりなら駐車しても許容します」という区域を設けたらどうか、という提言をしている。大学生のレポートみたいな提言だな。「路上駐車してもいいぞーン(ゾーン)」というわけだ。事実、渋谷などの繁華街では左よりの車線が赤で塗られてあるが、これは赤いとこだけはぜったい駐車するなということを示しているらしい。これは著者的にも賛成なんだって。うーん、ほんとにそれでいいんだろうか。赤く塗られていないとこの駐車禁止標識が形骸化してしまうじゃないか。民間業者にまで駐車違反の取締りを手伝ってもらっているというのに。というか自転車乗りの私としては、路上駐車はすべてうんこよりも邪魔であるから徹底的に排除してほしいのである。
8章は高速道路を予約制にしろとか時期や時間によって料金を変動させろとかいうトンデモ提言。こんなのは行楽目的で高速道路を利用する人にさえメリットがあるか疑問だ。なにより仕事で高速道路を使う人もたくさんいることも忘れてはいけない。たとえば年末の混む時期に郵便屋さんが「予約してないから年賀状やお歳暮を郵送できない!」とかなったら困るでしょう。送料も値上げされるだろうし。あと帰省ラッシュもひどくなるなあ。新幹線はさらに混むだろうなあ。
ところで、この8章は第3部に属しているが、第3部の題は「交通渋滞の政策科学」だ。政策を考えるときにいちばん大切なのは、政策を実施することによって得られるものと失われるものとを天秤にかけることのはずだ。渋滞を減らすのもいいが、それによって地方の観光地が寂れるかもしれないことも考えようよ。ここでは一方的に「渋滞はヤダヤダドウシヨー」と思いつきを書きなぐっているだけじゃないかプンプン!まあ、このトンデモ対策が実施されたら車を使うひとが減るかもという個人的な期待はあるけど、まず無理だろう。
そんな調子で残りの9章と10章も続きます(割愛)。
交通渋滞をテーマにした本はいろいろあるけど、その中であえてこれを選ぶ積極的な理由は見つからないのだった。
 
あんぱん