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こうすれば犯罪は防げる 環境犯罪学入門 (新潮選書)

こうすれば犯罪は防げる 環境犯罪学入門 (新潮選書)

タイトルだけ見るとトンデモ本のにおいがするけれど、中身はまともぽかったので買ってきた(台東区図書館には置いてなかった(T-T))。
この本の力点は、犯罪を防止するためには環境を改善する必要がありますよ、というところにある。犯罪者個人(人格、属性)についてはほとんど考慮しない。
具体的な施策としては、空き巣予防として街の道路を袋小路にしたり、コミュニティとして不審者を監視できる町並みにしたり。万引き防止として、監視カメラを設置したり。まあ言って見れば「おなじみの」対策が並ぶのだけど、こうした具体策を支える理論がしっかりしているので、アイデアしだいでもっと応用がききそうだ。
本書の白眉は5章だった。目立つ制服の生徒ほど非行率(非行÷犯罪)が下がる、ということを主張しているのだけど、結論よりも論証の過程が大変参考になった。「そもそも目立つ制服とはどんな制服か」というところから考えはじめ、非行と犯罪を定義し、調査対象の高校生が虚偽の回答をしないことを証拠立てた上で調査の分析に入ってなるほどー!って感じ。ちなみに、非行率(非行÷犯罪)が下がるということは、犯罪は減らないわけだけれど、それがなぜなのかも本書を読めばわかるでよ。犯罪も減ればいいのに、とは思うけれど。とはいえ眉のツバはすっかり乾いたのでした。
よくやられている犯罪者のカウンセリングや心のケアなんかに比べて、本書が主張するように環境を改善するほうが予防効果(あと費用効果)が大きいと私は思う。前者は犯罪者ひとりひとりにしか効果がないからいちいちお金がかかるし、そもそも心のケア自体を嫌う人はたくさんいる。だからその効果だって疑わしいんである。
こんなこと言いたかないけれど、誰もが犯罪予備軍だと考えるのが手っ取り早くて当たってる気がする。「誰が(どんなやつが)やった」ということは考えても埒が明かない。だから誰もが犯罪をしにくい環境をつくるのがいちばんよさげだじょ。