蚊取り線香を買った。
うちの部屋は3階で、蚊なんてほとんどいないが、蚊取り線香がほしくなった。30巻入りで700円もするから迷った迷った。
蚊がいないし、700円は高いし、ああどうしようどうしよう。どうしようっていうか、ふつうこの二つの条件がそろったら買う人なんていないのだけど。
 
あの巻き巻きで深緑色の蚊取り線香がほしかった。決していいにおいとはいえないあの香りをかぎたかった。
何よりあの缶。雄鶏マークと、なんだか知らない花を無数にあしらった意匠の缶!プラスチックの取っ手!この意匠には、明らかに平成の世で断熱材とエアコンに囲まれて生きる人々の、昭和へのノスタルジーをかきたてようとしているKINCHOの巧みな戦略が見え見えだ。見え見えとはいえ、買ってしまったからには私の負けと言えよう。
 
ああこの香り。実家の畳の部屋と、窓から聞こえたかえるの鳴き声がよみがえるようだ。
 

KINCHO‐STYLE キンチョウスタイル―素晴らしき金鳥CMの世界

KINCHO‐STYLE キンチョウスタイル―素晴らしき金鳥CMの世界

こんな本まで出しているのか。