空間信者(Space Madness!)
http://www.propellerheads.se/substance/discovering-reason/index.cfm?fuseaction=get_article&article=part7
むかしむかしスウェーデンに・・・
分別のある紳士がプロペラヘッドソフトウェアでReasonの新しいリバーブユニットの開発に着手したときのことである。彼らの目標は”これがこの惑星上でいちばんのソフトウェアリバーブである”と高らかに宣言することだった。市場にある中で最強のハードウェアユニットと比較してRV7000が優位に立つまでは満足できなかったのである。そしてそういった決意と試みにおいて、彼らは成功を収めた。
今ではリバーブユニットは本当に本当によいものなので特に重要なものだ。うちゅーじん的な音をReasonで出せるし、日々の生活の中で経験するあらゆる環境を再現してくれるものとしてRV7000は必要だ。そういうわけで、RV7000はReasonの中でいちばんいそがしい。そしてなんと見事な働きぶりであることよ!
 
ところで、リバーブって何よ?(What is reverb, anyway?)
簡単に言うと、リバーブレーションは音響装置を使わない生の自然における音の反響のことだ。にもかかわらず、多くの人はリバーブを何かエフェクトのようなものだと考えているし、しょっちゅうそのように扱っている。でも”エフェクト”という用語には以下のことはまったく含まれない;すなわち、現実の生活で耳にするあらゆる音は生の反響を伴っているということを。なので、ドライ、ミュート、デッドサウンドなどのリバーブレーションでないものは何であれ、リバーブよりもエフェクト的なのだ。単にそれは、えーと、不自然なもの、だ。
バーブユニットは、現実的な空気感を(再)構築するために使うものだ。音を完全にリバーブまみれにするのは、ここでやろうとしていることとはぜんぜん違うと言っておこう。音楽が聞かれるであろう環境が違うことに心を配ろう。2つのスピーカーがおいてある部屋は、それ自身がある程度リバーブを生成してしまう。可能な限りすべての空間をシミュレーションするならヘッドフォンが必要だ(もちろん聞き手が超でかい耳をもっているのでないなら)。そうすれば、ふつうは意図したとおりの聞こえ方であることを約束できる。
じゃあRV7000のパラメータを見ていこう。はっきり言ってこれらは、もちろんふさわしい名前を持ってはいるが、すべてを物語っているわけではない。
 
・プレディレイ(Pre-delay)。巧妙に使われたプレディレイは深みを与えてくれる。たとえばとても長いプレディレイは、音源の近くにいるような印象を与えてくれる。リードボーカルについて言うなら、親密な感覚を作り出し、目の前にリードボーカルを再現してくれる。とても短いプレディレイは、逆に、歌い手が遠く離れた長いトンネルの反対側の端にいるみたいな感覚を生み出す。つまりリバーブと声が同時に耳に届くのだ。アンビエントサウンドか、遠くの背景に移動して演奏したいような場合によくなじむ。
 
・初期反響(Early Reflections) 部屋が音に対して与えるのは、第一の、初期の、反響だ。その一番目の反応のことを言う。その後にも直接的に聞こえるリバーブの残像は、派生的な反響によってもたらされている。つまり、オリジナルの音源の反響ではなくて、反響の反響(の反響・・・続く)というわけだ。初期の反響(とその時間差)は、大事だ。なぜなら、それによって部屋の印象が決まるからだし、大まかに部屋のサイズを判断するために耳が探している手がかりでもあるからだ。部屋が大きくなるにしたがって、音源は部屋の壁から遠くなり、初期反響が「送り手に返ってくる」までに長い時間がかかる。人間の耳はコウモリのようにはまったく優れていないけど、そんなことまで判断しているのだ・・・。*1
 
・拡散(Diffusion) ・・・そう、私たちは反響の特長さえ判断している。もし初期反響が「きれいな」エコーに似ているなら、その部屋の表面は硬くて平らだとわかる。もし反響がもっとぼやけて拡散しているなら、その部屋は不規則な形をしているか、もしくは違う素材の違う物があるという判断ができる。反響が部屋のいたるところで発生しているからだ。RV7000のアルゴリズムに付属しているDiffusionパラメータは「空間不規則度生成機(space irregularity booster)」だ。部屋のシミュレーション中に、音がきつすぎたりきっちりしすぎていると感じたら、ちょっとだけDiffusionをあげてみよう。これは大理石の壁に壁紙を張るようなものだと思えばいい。
 
・高周波カット(HF Damp) なんで多くのリバーブが高域を鈍らせるオプションを備えているかというと、高域は他の音よりも早く消えてしまうからだ。現実世界でも、高域は空気や部屋の表面に吸収されている。この現象は部屋が広くなるほど顕著だ。仮に長いリバーブでHFダンピングをまったくしないとすると、鏡の壁があって空っぽで空気中にある種のガスを撒き散らたという、かなり変てこなホールをシミュレートしていることになる・・・!
 
道具をよこせ(Hand Over the Goods)
君の音楽を環境に適応させよう!大事なこととして、なんにでもちょっとしたリバーブをかけることで大きな結果が得られる。悲しいことに、多くの人はリバーブを”なになにかどちらか(either/or)”ツールとして使っている。たぶんこんな経験があるだろう;曲をアレンジし始めて、パッド、ストリングス、ピアノは全部いいリバーブがかかっているのに、それ以外はほとんどの音をドライ(少なくともベースとドラム)にしているという。うーん、そういうのは古いホームスタジオのやり方だ。めんどくさいという思いもあるだろうし、CPUの節約でもあるだろうし、あるいはソフトウェア製品が街にやってくる前の安いハードウェアリバーブしか所有していなかった時代のトラウマかもしれない。だけど、プロのレコーディングでは、ミックスする際に個々のサウンドすべてに何らかの環境が用意されていることを知ることになるだろう。プロデューサーは短くてほとんど気づかないくらいのリバーブプログラム(その種のものはふつう”スタジオ”、”物置(closet)”、”小部屋”みたいなパッチ名がついている)をめちゃめちゃ多用している。そういったものは、そこにあることに気づかないし、去った後にはもうとらえどころがなくなるのだ。(The kind you don't notice when it's there, but miss when it's gone.)
ここにデモンストレーションがある:このトラック*2では、4つの短いリバーブを使っている。1〜4小節では、すべての音にリバーブをかけている。5〜8小節ではすべてのリバーブはミュートされている。このミックスで「ドライ」だと思っていたサウンドが突然違った意味での「ドライ」になった・・・!この機会にはじめの方で説明したヘッドフォンとスピーカーの比較をしてみよう。ヘッドフォンでは、リバーブエ効果はかなり明らかだけど、スピーカーだととてもかすかになる。そういうわけで、ミックスにどれくらいリバーブをかけるかを決定するときには必ず、こういうA/Bモニタリングをしよう。
さて、ちょっとずつ積み重ねることでビックリリバーブ*3を好きなだけ実現するならReasonが理想的なツールであることをちょっと考えて欲しい。満足のいくまでたくさんのリバーブを(CPUが処理できる限り)、センドにもインサートにも使えるのだ。それでもリバーブ気ちがいにならないでいる理由があるかい?ノー!*4
 
自動化の悦び(Automation Elation)
NN-XTのリモートコントロールが自動化できないことにお気づきだろうか。そのせいでReasonには自動化できるリモートパネルがないんだと思い込んでしまっているかもしれない。でもRV7000は例外だ!ほら、すべてのパラメータが自動化できるし、リモートパネルで”ソフトパラメータ”だってできてしまうのだ。やれば楽しいものだから、やってみよう(Much fun can be had, so we decided to have some)。
音楽的な作法を無視したこのめちゃめちゃな断片をお楽しみくだされ:7000 automad.rns
 
残響を射止めろ(Pin the Tail)
Discovering Reasonを読んでいるのなら、我々がCVやGateの大ファンだということは大したニュースではないはずだ。これこそがReasonのユニークな特徴だ。結局のところ、バーチャル電子機器の回路を焼ききるリスクもなく配線を自由に変えて楽しめることって何があるだろう?RV7000はたくさんCV/Gateを提供しているわけじゃないけど、それでもなかなかおもしろいもんだ。たとえばGateは、CV(またはMIDI)経由でオープンできる。じゃあリバーブの残響(reverb tail)をサウンドに打ち付けて動けないようにする(pin)やり方を紹介しよう。そのやり方はこうだ:はじめに、RV7000経由で少数の違ったサンプルをルーティングする。そしてDr.REXをつくり、スライスゲートの出力をRV7000のゲートトリガー入力に接続し、ゲートセクションを利用可能にする。これでDr.REXのループスライスだけでリバーブがかかるようになった。事実上、これはDr.REXのループにリバーブを追加したのではあるけど、リバーブレーションがかかっているのはREXループの音じゃなく、完全に違う音にかかっているわけだ。これだ:7000 cvgate.rns。もしたまたまMIDIキーボードを接続しているなら、キーボードのどれかを押してみるといい。するとキーを離すまではゲートが開きっぱなしになることがわかるだろう。リバーブの残響の長さを調節するために、ゲートのリリースタイムを調節するのもいい考えだ。
 
おわりに
バーブは、自然の現象を再現する特別なエフェクトという以上のものだということはいつも心に留めておこう。「エフェクト」という言葉は忘れて、「自然の背景(acoustic backdrop)」であるとイメージしよう。音楽の雰囲気や特徴を吟味し、それをどんな種類の空間に入れてやるかを決定するのだ。教会?小部屋(closet)?ホテルのスイートルーム?RV7000はあなたの部屋を予約して待ってるよ。

*1:確かに、やってることはコウモリと似てる。無反響の部屋で圧迫感を感じるのはそのせいだったのか

*2:原文では.rnsのリンクになっている

*3:o'reverbだけど、o' の意味がわからないのでohとみなしました

*4:お見事ざんす。こないだ2ちゃんねるのReasonスレを流し読みしてたら、「Reasonでは音が太くできない」と感じている人が多いようだったが、これを読めばもうちょっと挑戦する気になるんじゃないか。まあ「太い」の意味は人それぞれではあるんだろうけど、たぶん音を太くするために多くの人がやっているのはイコライザでブーストしたりとかラウドネスを調整することくらいではないかとおもう。でも、リバーブのことを忘れちゃいけないのだ。リバーブというと音の残響のイメージばかり持ってしまいがちだけど、実は意外なくらい音質を変えることもできる