Dr.REXに聞いてみよう!
http://www.propellerheads.se/substance/discovering-reason/index.cfm?fuseaction=get_article&article=part1
”僕はループを使わない。僕は自分の音楽を作るんだ”
これ聞いたことあるだろうか?たいていの返答はイエスだろう。おかしなことにループを使うということはいまだにけっこう議論の的になっていて、その議論というのは芸術性と「ボタンを押すこと」との間にあるグレーゾーンというぼんやりした中にある。結局、ループというのは誰かの努力や才能や創造性のたまものである。でも今一度問うけど、ループはどんな種類の芸術でもないのか?あなたは誰かによって録音された--演奏された--楽器のサンプルを使ってるんじゃないか?また誰かがプログラミングしたシンセのプリセットをも。誰があなたにNN-XTのバイオリンのトリルを与えているのだろう。サンプルした人?指揮者?バイオリニスト?バイオリンを作ったアントニオストラディバリウス?本当のところは、卓越したアーティストの手によって、たくさんの生き生きとしたループが、どんな他の音楽の達成を前にしても屈しないユニークな芸術作品として形になっているのだ。そして、ループをひねったり、曲げたり、カーブさせたり、整えられるなんて強力なツールは、Dr.REXをおいて他に無いのである!
Discovering Reason(このコーナーの名前)のはじめの章では、このおりこうさんなデバイスを探検してみるつもりだ。まずはシンプルでより標準的な機能からはじめて、記事が進むにつれDr.REXのタネ明かしをするまで深く掘り下げていこう。

注意:記事中にmp3があるのがループなので、mp3プレーヤーをループ/リピートモードにの設定しておくことをおすすめします。
 
Dr.REX - シャカシャカ鳴るもの
メインのリズムをなすものとしてドラムループを前面に使うということは、ここから先は必要じゃない。実際、ほぼ間違いなく、それをするのは時代遅れなのだ。1980年代から90年代には、サンプルされたループはレイヴでしかなかったし、ジェイムスブラウンの”Funky Drummer”(featuring Clyde Stubblefield)をのぞけばそういうのはどこにでもあった。でもそれ以来、もっときめ細かくて洗練されたドラムループの使用法が発展した。もしドラムループに接していてノウハウがある誰かに尋ねたら、彼らはたぶん「あれば便利なもの*1」だと答えるだろう。一般的なアプローチは、ドラムマシンでドラムをプログラミングするか、キーボードでそれをするのだけど、それをしてからすでにあるメインのドラムを味付けするというものだ。Dr.REXのおかげで、Reasonならこの方法は機械的(no-brainer)だ。これをやってみて:
 1 ReDrumか何か他のサンプラー(NN-XTやNN19)を使って「主要部分」を作る
 2 Dr.REXを作って、あなたがプログラミングしたドラムループに、リズムやフィーリングその他において、とりわけ高音域において、補充するようなループを見つける
 3 Dr.REXのフィルターを使う--HP(high pass)モードにして、お望みの音とそうでないところの間にぴったりはまるような箇所を、FREQをスライドさせて見つける
 4 コンプレッサーを間に挟んで、ご機嫌でアグレッシブなセッティング(Ratio 4-8:1、Threshold 0、Release 0とか)にしてループの細かい部分が表面上に出るようにする
このDr.REXの応用について2つ例を作っておいた(すぐに比較できるように、トラックかミキサーはミュートにして使うこと):hipass sizzle1.rns | hipass sizzle2.rns
 
Dr.REX - スウィングを与えるもの
それでもまだループを音として使いたくないのなら、ループのリズム感だけを使うこともできる。あえてこう言ってみよう。あなたがたとえコンガが嫌いであっても、あなたはあるコンガのループが、立ち上がってファンキーなちょっとしたダンスナンバーを踊ってしまうようなナイスなグルーヴを持っていることに気づくだろうと。After all, it has this human feel to it that no stiffly programmed drum pattern can mimic.まあ、やってみよう。コンガのグルーヴを盗んで火にくべるのだ!その手順は以下:
 1 Dr.REXを作って、グルーヴィーなループを開く
 2 Dr.REXの”To Track”をクリックする
 3 シーケンサーウィンドウで、今作ったグループを右クリックする
 4 コンテキストメニューから、”クリップからグルーヴを抽出”を選択する
これでグルーヴは全部ものにした。”User”のドロップダウンメニューの一番下に、グリッドにクオンタイズする(というコマンド)を見つけることができる。このグルーヴは、次に”クリップからグルーヴを抽出”をするまではそのまま残っているから、ソングと一緒に保存され、あなたが録音したどんなリフやパターンにも適用することができる。
 
Dr.REX - 動く動物(the animation animal)
あなたができるほかのクールなこととして、Dr.REXをリズムモジュレーションのソースとして採用するというのがある。CV/Gateを使ってREXループのグルーヴを、静的なテクスチャにまで生命と鼓動を与えるものとして、シンセの音色やサンプラーの音に適用することができるのだ。Dr.REXを音源として使う必要はなく、黙らせておくのだ。必要なのはグルーヴを「動くもの(animation)」としてグルーヴを与えることだけだ。ここにあんまり興味をそそらないシーケンスがある:(mp3)さて、Dr.REXのドラムループによってシンセサイザーのフィルターを操作すると、まったく同じシーケンスがこんなふうに聞こえる:(mp3)。(設定の参考としてanimation1.rnsかanimation2.rnsを見てほしい)
 
Dr.REX - 形を変えるもの
”ドラムって何のドラムだ?”ループに特化したドラムはその使い方をしばるものではない。Dr.REXにしかないひねりのやり方として、外部のモジュレーションをCV/Gateを使って組み合わせる方法がある。どんなドラムループでも、かすかにそれとわかるというくらいにまで変形することができる。ちょっと説明させてほしい。ここにFactory Sound Bankの基本的なドラムループがある:(音)
これ以上聞きたくない、って感じ?でもがんばってFX*2やMatrixのシーケンスを使ってフィルターをかければ、このループはこんなふうに変えることができる:(音)
REASONのソングバージョンがあるので、これをどんなふうにしているのかを見たければどうぞ:abstracted.rns
 
Dr.REX - メロディーを作るもの
はじめのうちはミュージックループを何か有用な形にするというのはおっかない作業のように思えるだろう:間違ったキー、間違ったコード進行、すっとんきょうなメロディー--どうやってこれを曲にあわせたら良いんだ?というわけで、Dr.REXの完璧なミュージカルコントロールをものにする方法を教えてあげよう。まずはじめに、REXループのピッチを変えるには少なくとも6つの方法がある:
 ・グローバルトランスポーズ(オートメーション可)
 ・個々のREXスライスのピッチ
 ・外部ソースによるオシレータピッチのモジュレーション(CV)
 ・ピッチベンド
 ・LFOピッチのモジュレーション
 ・エンベロープピッチのモジュレーション
これらのうち2つかそこらを組み合わせて使えば、ミュージックループを手なずけることができ、どうにでもやりたいようにできる。やってみよう:
はじめに、Reason Essentials Refillパッケージから”Take Your Pick01”と呼ぶベースのループを開こう。オリジナルの状態では、このループはこんなふうに聞こえる:(音)
ここで、適当なスライスのピッチを調整してループを「平らに」し、より扱いやすいようにする。このおかしなベース音は、まっ平なトーンと山形のトーンが、すっかり変わってしまったということも意味している。でもそれだけでもなかなかおもしろいものになるのだ。結果はこんなん:(音)
 
ずるいやり方1:さてもうすっかり変わってしまった。ここからまったく新しいベースラインを、ピッチをコントロールするためにMatrixを使って作ってみよう。このやり方は、個々のスライスのピッチをいじるよりも柔軟な方法なのだ。なぜならあるスライスの途中であってもピッチを変える事ができるからであり、複数の(Dr.REXの)インスタンスや違うシーケンスを作らずに、同じDr.REXでバリエーションを演奏することができるからだ*3。このアプローチが好きな人なら、ピッチをシーケンスするためにたぶんMatrixのCurveを使うだろう。でもそうはしない。Curveの部分は他の事のためにとっておいて、Keyのグリッドを使うのだ!でもどうやって?Note CVはピッチにそぐわないの?それは実に正しい(想像だ)が、それゆえに間違っている。ReasonのどれかのシンセかサンプラーのNote CVのinputに(MatrixのNote CVを)つなげて正しい音階が出ていることが認識できるのなら、その”そのえもいわれぬ程の微妙なスケール(voltage scale)”は半音階でも表せないのだ。Note CVのoutをOsc PitchのCV inにつなげた場合は、”事実上のスケール(virtual voltage)”においてCとC#との微妙な違いはセミノートをあげるのとも違う。*4
はじめにDr.REXの背面に回り、MatrixのNote CVをモジュレーションするためにOsc PitchのOxc Pitchのinputにつなげる。そしてOsc Pitchのinputの横にあるノブを右いっぱい(値127)まで回す。これでCVの入力が100%の正確さでセミノート値に変換される。残念なことに、こうすると音域を越える寸前のレンジまでピッチが跳ね上がることにもなるので、Dr.REXのフロントパネルに戻ってOsc Pitchを変えなければいけない。つまりOctaveノブを右いっぱい(値0)*5に回す。これでもはや新しいベースラインをMatrixのKeyを使ってステップごとにプログラミングするという固定観念から抜け出したわけだ。ここにどんな音がするかの例がある:(mp3)。いかす(Neat)!というわけで、REXファイルにベースループが入っているからといって、それをベースとして使う必要はないということだ。Dr.REXの味付けの可能性(tweaking possibilities)を組み合わせることで、ギターにも、スタッカートのコードにも、お望みのように変えることができる。複数のDr.REXを使った例がある。元はすべて同じベースのループなのにまったく違ったようになっている:(mp3)
トップにドラムを持ってきたのも聞いてみて:(mp3)
 
ずるいやり方2:いいかな、ピッチを変えるものとしてMatrixを使うことや、スライスごとにピッチを変えるやり方はもうどうでもよくなったね。このトリックは、実際にはぜんぜん”ずるい”ことなんかじゃなく、Dr.REXの説明書に書いてあることなんだけど、ユーザたちはみんなそれに気づかない。MIDIキーボードの標準的なNote-onメッセージを使ってDr.REX(の音色)を変える事ができるってことに。このピッチをコントロールするやり方はもっとも簡単で、もっとも”ミュージシャンにやさしい”方法だ。単にMIDIキーボードのOctaveのレンジを調整するだけで、もっとも低い音程のC2やC0を演奏できる。
さあいちばんはじめに(Matrixでピッチをコントロールした)トリックを組み合わせてカスタムシーケンスを作り、すべてのピッチをキーボードからトリガーしてみよう。
Synthotica refillの”80 manip”からはじめてみよう。これはまっすぐなシーケンスで、同じノートが繰り返しプレイされ、音はこんな感じだ:(mp3)
”ずるいやり方1”で、MatrixでDr.REXのOsc Pitchシーケンスを組んだものを使い、エフェクトを追加して、フィルターもかけて、テンポを早くする。結果:(mp3)
最後に、”macrolevel transpose”をレコーディングする。これはDr.REXのシーケンサトラック上に、単純にすべて4種類のノートを並べたシーケンスだ。Voila:(mp3)お手軽なテクノだ!ひとつ足りないのはちょっと荒めのテクノドラムだが、これをかぶせてみると:(mp3)ほらね。
 
おわりに
見てきたように、Dr.REXやREXファイルは固定的な繰り返しのループよりももっと多くのことができる。Dr.REXは間違いなくReasonという環境の中でももっともユニークであり、ひとたびドラムループからはじめてして他の可能性に足を踏み入れたら、まじで楽しいのだ。ボーカル、ギター、ベース、またはハードウェアシンセなんかをReCycleでレコーディングし、フィルター、モジュレーション、クオンタイズ、トランスポート、ランダマイズというDr.REXの機能でどれほど没頭できるかを見てみてほしい。このドクターはいつでも待ってるから相談してみよう!

*1:the icing on the cake 慣用句らしい。アイスのシャリシャリ感とDr.REXのシャカシャカ音としてのアプローチにかかっている面もあると思う

*2:フェーザーのことかな?

*3:Matrixのパターンを変えるだけでいいということ

*4:難しくて訳せないが、MatrixのCurveを使えば非常に細かく音階を設定できるけどそれは細かすぎて耳に聞こえるほどの影響をもたらさない。だから半音階単位で設定できるKeyを使うんだ、と言っているようだ。ピアノでダブルシャープに実質的な意味はないのと同じ理屈

*5:左いっぱいの間違いだと思われ