退職しました。無職です。
今日はもうみんなに挨拶して回って、サッといなくなろうなんて考えていたのだが、そういうわけにはいかなかった。ラスト・ボスがいたのである。
 
強敵だった。今までで最強。昨日の日記に書いた部長なのだが、かたくなに断り続けても
 
「もう一度考え直したほうがええぞ。おまえの退職届は俺がとめてる。今やめても中途半端やんけ、何もしたいことないんやったら仕事しながらでも考えたらええやん。後悔することになれへんか。やめる理由がはっきりせんうちはまだ続けてたほうがええぞ。おまえ社長賞もらえるかもしれんし。だからうちの部署でやりなおさへんか。」
 
そんなことを昼に話した。で、やっぱり断り続けた私。
 
「今日がリミットや。今日中に答えもらわな異動通知も退職届けもだせんようになる。17時にまたそっち行くから、それまでによう考えとけ」
 
ここここ、こわー、どうしようどうしよう、と考えている間に17時。
 
 
「答えはもう出ています、やっぱり僕は続けられません。ちょっとやってみようかな、という気分で異動したとしても、すぐにやる気がなくなるかも知れない、その可能性はとても大きいと思うんです。僕のやる気がなくなることなんてどうだっていいんですが、それによってまたみなさんに迷惑をかけることになったとしたら、申し訳なくて。私が会社にこなくなった直前に依頼されていたあの仕事も、結局投げ出してしまい、たくさんの人に迷惑をかけてしまった。そんな状態でのうのうと会社に居続けたいとは、どうしても思えません。恥と迷惑の上塗りをするようで・・・
会社っていうのは、部署を換わるにしても、仕事をやめるにしても、いちいち手続きが必要だったりしますが、そういった足かせがなければいいんですけどね。ちょっとやってみようかなくらいの気持ちでやってみて、やっぱりやだなと思ったらすぐにやめることができたら、そんな身軽さがあれば、好奇心と向上心はありますからなんでもやってみせるんですけどね。会社っていうものの性質上、縛りがあるのは仕方ないことですね。
世の中にはいろんな仕事がありますよね、掃除のおっちゃんとか、風俗店の情報屋なんてものまでありますからね。あるいは、僕がまだ知らない職業もたくさんるのだとおもいますし。そういった無数の選択肢がある中で、情報技術みたいにメジャーな業界をつづける意味はあるのかな、と思っています。職業に貴賎なしといわれますが、僕は本当にそうだなと思います、どんなに社会的地位が低くても賃金が低くても、僕自身が気に入れば、それが最高の仕事でしょう。それを探したいと思っているわけです。
何をしたいのかはまだぜんぜんわからなくて、これから探すつもりですが、見つけることができるかなという不安は少なからずあります。だからこの会社に舞い戻ってくる可能性だってゼロじゃないんです。広い視野を身につけてなお、青い鳥をこの会社に見出すのかもしれない。岡○さんも、○根さんもそうでしたよね。I○Mに行ってから舞い戻ってくるなんて、やっぱりこの会社にはどこか私の知りえなかった部分でいい面があるのでしょうし。
決して嘘じゃないです。今はとにかくこの業界にかかわらず、いろんなものに触れてみたりしてゆっくり考えたい。有給休暇は残されていませんから、会社にいつづけながら考えることなんてできないです。休みの日でも常に会社のことが頭から離れませんでした。無職にならないと、ちゃんと考えられない気がします。特別休暇なんてもらって、働いてないのに給料をいただくこともしたくありません。
なんかまとまりがありませんが、やめることは決意しているわけです。それははっきり申し上げます。迷っているとすれば、どうやって引き止めを断るかということだけです。本当に申し訳ありません。なんか謝ってばっかりですが、それしか言うことができないんです。」
 
ああ、疲れた。
話し合っているあいだ厳しい口調だったその部長も、決まったとなると急に和やかになった。今日はその部長とお食事をしてきたのだが、そのときにやっと、部長の本音らしきものを聞きだすことができた。
 
「お前がやめたいと思うのも無理はない。この会社はやっぱり変や。力を注ぐべきポイントを間違ってる。けっきょくのところ、上層部が現場をちゃんと把握してないから管理ができてなくて、こんなことになってるんやと思う。お前んとこの部署でゾロゾロと人がやめていくのも、それだけの理由はあるわな。お前んとこの部署だけちゃうぞ、この会社の若いやつらみんな疲れきっとるやんけ。なんかのきっかけで、もっといっぱいやめるやつが出てくるかもしれん。部長とかマネージャとかもそうやけど、若いやつらに我慢が足りんとか思ってるか知らんが、そんな責任のなすりつけをせんと、きちんと現場を把握した上で管理したらなあかん。あいつらは何やってるんやろな。なんやかやで仕事持っとるから、管理なんてしてる余裕もないんやろうな。こないだ部会とかいって、各部長が出席する会議に出たが、こいつら何考えてるんやと思ったわ。どうでもいい話ばっかりしてんねんもん。
改善すべきところはいっぱいあるで、俺は今その改善案を作ってるところやねん。まあ監査みたいなもんやな。お前、もし生活に困ったら俺に連絡よこせ。アルバイトとして雇ったってもええぞ。自給1000円くらいやけどな。ヒヒヒ」
 
まったくもって、おっしゃる通りです!
そして、この期に及んでなお、私を買ってくれる人がいるとは。
 
私がんばります。何をがんばるかわからんけど、なんかがんばりたい。退屈な生活にはしないぞ。