夜には雨があがって、空気が澄んで、風もない。星を見るのにはいい条件がそろった。
天体望遠鏡木星がくっきりと見えた。ところがいつもは4つ見える衛星が、3つしか見えない。よく目を凝らすと、木星の真ん中あたりに小さな黒い点があるのがわかった。これが今日は見えない(木星に重なっている)衛星のひとつの影だった。
この瞬間、星が本当に宙に浮かんでいる存在であることを実感した。
星は空に張り付いている絵ではない。百科事典の中だけの世界ではない。私たちはそのことを知ってはいるけれど、それが本当に本当なのかということを、実際に確かめることをしていない。

木星というと、こういう絵を思い浮かべる人がほとんどだと思う。でもこの絵と、私たちが肉眼で空を見上げて見る木星とはあまりにも違っている。天体望遠鏡を覗くと、木星が本当にこの絵のような色形をしていて、本当に宙に浮かんでいる、ということに驚く。もともと知っていることのはずなのに驚くなんておかしなことだ。でもそれはたぶん、木星がこの写真のような姿をしながら浮かんでいることを、実は私たちは信じきれていないからだと思う。