ちっさいクモ君-part I(Itsy Bitsy Spiders - part I)
http://www.propellerheads.se/substance/discovering-reason/index.cfm?fuseaction=get_article&article=part10
動かない捕食者(The Idle Predators)
ちょっと見てみて、Spider Audio Merger and Splitter and Spider CV Merger and Splitterって、えらく長くておもしろい名前だ。でも彼らがいっしょけんめい働いていることをあなたは知るまい。彼らはReasonデバイスの中ではもっともシンプルだ;灰色で、のっぺりしていて、影が薄い。彼らがやることは、そこに座って、他のデバイスが彼らの巣にかかるのをまっていることだけだ。だけどごく単純なことは時として驚くべき効果を発揮するし、これらのちっちゃい赤ちゃんたちがあなたの作業手順を根本から改革し、改善してくれるのだ。今月の記事ではクモ狩りということで、虫眼鏡を持って、Spider Audioが為す密林の探検についてきてほしい。
 
豊穣の地(Fields of Interest)
ここにSpider Audioを使ってできる手短な解説をしとこう。
サブグループ作成 − 複数の信号を単一のミキサーチャンネルにルーティング
エフェクト信号の集線 − 複数の信号を単一のエフェクトユニットに集線
別の対象へ信号を分割 − 信号をA/B/C/Dに切り替える必要があるときに
同じ信号の分割/結合 − 信号を別の方向へ向かわせ、再合成させる
”偽”ステレオエフェクトの作成 − モノラル信号を2つへ分割し、エフェクトを適用し、左右へ割振る
じゃいくつかの事例を。
 
効果・的(Effect-ivity)
14:2ミキサーは呼びのsend/returnを持っている。構成の複雑さによっては、これでは不十分なこともあるかもしれない。でもふと気づけばそれと同じ数の、つまりaux1とaux2を1チャンネルに送っているとか、たとえば、DDL-1を2つ以上使ってステレオや多重のディレイをやったりしてるはずだ。ここで便利なSpider Audioの登場だ。auxセンドを4つに分割でき、それと同じ数の別々の信号とセンドを(ひとつの)auxリターンに結合できる。例として、4つのDDL-1 delayを持出して、複数分岐のディレイ(multitap delay)を構築した例をここに紹介している(図参照)。それぞれのディレイは自動化するための個別のシーケンサトラックを備えている。そして4つのディレイがぶら下がってもまだ3つのauxチャンネルを自由に使える状態なのだ。このやり方は複数のエフェクトをひとつのAuxチャンネルに送りたいような場合なら、どんなセットアップにおいても便利だ。複数分岐のディレイは一例だけど、別の例としてコーラスとリバーブ(コーラス+リバーブチェーンとは対照的な*1)とか、試したければ、事実上どんな信号であっても、均一の音量で2つの個別の対象に送れる。
 
Parallel Slalom
ぶっ飛んだことをやる気があるなら、Audio Spiderの海軍を召集することを検討しよう(ここの例では14ユニットになってる:図参照)。巨大パッチ港を作るのだ。
そう、めちゃめちゃややこしいルーティングを初めから含めておくわけだ。でも一度これをやったらもう二度とやりたくないだろう。一旦完成したらテンプレートを安全な場所に保存しておくことをお勧めする。
このアイデアは、デバイスをメインの14:2ミキサーにつなげる代わりにSpider Audioにつなげるというものだ。Spiderはそれぞれ別のチャンネルでミキサーにつなげる。と、ここまでだとふつうの結果になるが、Spiderが本領を発揮するのはここからだ。どんなふうに?2つのシナリオを紹介しよう。
 
1.ReWire
すべてのデバイスをミキサーから取り外してハードウェアインターフェースに再接続をすることで、それらがReWireホストアプリケーションのチャンネルであることを示す必要に駆られたことがあったなら、その代わりとしてここに書かれた方法が役に立つかもしれない。単にそれぞれのSpiderをどちらともメインミキサーとハードウェアインターフェースに接続するだけで、両者で同じルーティング構成が使えるし、ReWireドメインから抜けたい時にもわざわざ解体する必要がなくなる*2。Reasonミキサーのどれかをミュートしてみると、メインのミックスからは消えてしまうが、信号はReWireホストへ送られ続けているからアクティブな状態でさらされている。元に戻したいならミュートを解除してReasonのミキサーをオンにし、ReWireホストのミキサーをミュートにすればいい。ケーブルで混乱する必要なんてぜんぜんない。
 
2.代理ミックス(Alternate mixes)
この”dual lane”を採用するほかの方法は、すべてのデバイスを別々の14:2ミキサーにルーティングするというものだ。このやり方で代理ミックスを作り、それぞれを切り替えられる。ミキサー#1の音量を落として、ミキサー#2を上げることによって簡単にできる。これにはいろんな応用がある。ひとつは現在完璧なミックスだと信じている方の主ミキサーと、めちゃくちゃなアイデアを試すための「下書き用」の副ミキサーを作るというものだ。これなら主ミキサーの繊細な設定を乱す恐れがない。あるいは2つの全く違ったミックスを同時に作業したいと思うかもしれない。サウンドをどちらの方向性にするか決めかねていたりとか、あるいは今自分が作業しているオリジナルでレミックスを作るという挑戦をしたいとかいう理由で。
どちらのSpiderも4つの分割出力を持っているから、理論的にはReWireルーティングやスタンダードルーティング*3、代理ミキサールーティング、それ以外にもあなたが選んだルーティング、どれも同時にアクティブにできる。でも大量のケーブルは一瞬にしてしっちゃかめっちゃかになる(reach the boiling point)から気をつけて、自分が作業しているトラックを見失わないように!
次回の記事ではSpider Audioと近い関係にあるSpider CVの探検に出かけよう。彼のクモの巣はよりすばらしいだけでなく、とっても強いのだ!

*1:as opposed to a chorus+reverb chain:どう対照的なのだろう?

*2:ReWireのホストを終了させるなどして、Reason単体の使用に戻したときに配線を変え直さなくて済むということ

*3:standard routing:たぶんReWireを使わないスタンドアロンのReasonのことだろう