誰かを好きになったり嫌いになったりするのは、その人がどういう人であるかはさほど重要ではない。重要なのは、自分がその人に対してこれまでどう振舞ってきたかが重要なのである。と、どこかの心理学者が言っていた。たぶんニコラス・ハンフリーだったと思う。いずれにしろ、これは心理学では常識的なことであるそうだ。
誰かにプレゼントをあげたりいろいろほめたりすることによって、人はその人のことを好きになるわけだ。もちろん恋愛関係に限ったことじゃない。会社の上司の指示をよくきき、オフタイムでは食事に行き、たまには苦言を呈し、わだかまりなく付き合うことでその上司とうまくやっていくことができる。上司がいい人だからそうできているのではなく、そうしているからこそ、その上司のことが好きになれているのだ。この傾向は、男性でもあるとは思うけど、特に女性に顕著だと思う。女性に一旦嫌われたら、それを回復するのはいかに難しいことかは誰もが知っていることと思う。女性は思ったことをはっきり態度にあらわすからだ。それは人付き合いをうまくやっていくための利点にもなりうるが、一旦崩れたらすさまじい勢いで悪循環を招き回復不能なまでに嫌われてしまう。
私はどうもうまくやっていけそうにない人と付き合わねばならない状況に陥ったときに、この心理学の説を思い出すようにしている。できるだけ献身的にし、好きな人にするのと同じように振舞う。結果としてその効果は、実のところあまり確かではないけれど、今のところ悪いほうには向いていないと思う。ただ、みんながそうすれば、世の中は今よりもっと住みやすくなるのは確かだと信じている。