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- 作者: イアンターピン,Ian Turpin,新関公子
- 出版社/メーカー: 西村書店
- 発売日: 1994/08
- メディア: 大型本
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構図の異質さで見せるのがダリで、対象の異質さで見せるのがエルンストって感じかなあ。
この本はそれぞれの絵に解説を与えようとしてはいるんだけど、こんな人の絵を解説するなんてそもそも無理があることがよくわかる。
この「荒野のナポレオン」という絵は圧倒的にすばらしいのだけど、その解説というのが、左のナポレオンが右の女の人に見とれていて真ん中の棒は性器を表現している、というんだが・・・ほんまかいな。私はこの手の話が昔からまったく理解できなかった。直立しているものを性器に見立てるのはもはやお決まりのパターンだが、そうすると何だって性器とみなすことができる。東京タワーのマスコットキャラクターがコンドームに似ていると指摘するのと同レベルだ。まあ、この解説があたっているかどうかはエルンスト本人にしかわからないだろうけど、個人的にはまちがった解説だと思いたい。
この絵以外にも、「これは戦争に対する怒りが表出されている」とかなんとか。戦争が嫌ならなんで絵を使って暗示するんだろう。言葉で表現したほうが伝わりやすいじゃないか。
昔、ピカソのゲルニカが戦争の悲惨さを描いたものだと教えられたときの落胆を私は忘れない。絵としてのよさがそれ自体で完結しているからこそ、あの作品はすばらしい(と私は思っていた)のであって、そこにこめられた思いが優れているからではないのだ。むしろ戦争が嫌だという気持ちは幼稚だと思う。